国際相続(韓日相続、贈与など)
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国際相続

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相続人国籍と相続人
ア.韓国の相続は相続人の国籍ではなく、被相続人の国籍が中心となっています。 つまり、被相続人が韓国の国籍のまま亡くなられた場合、相続人が外国籍であるか韓国籍であるかは関係なく、韓国の相続法が適用されます。
イ.相続人
① 胎児
② 異母(父)兄弟
③ 離婚訴訟中である配偶者
④ 認知された婚外子
⑤ 養子、親子、養父母、親養父母
⑥ 養子縁組させた実の父母
⑦ 北朝鮮に居る相続人
⑧ 外国籍を持っている相続人
⑨ 相続人が日本に居る場合や日本の国籍を取得している場合

韓国の兄弟が相続財産を独り占めした場合
例えば、韓国に居る兄弟が在日同胞である相続人を排除したまま相続財産を独り占めしたときは、相続回復請求権を行使して対抗しなければなりません。
実際に在外同胞のなかでは、外国籍を取得したという理由で、韓国ではこれ以上相続権がないと勘違いをして、韓国兄弟たちから相続財産を返してもらえない場合が少なくありません。
正当な相続権を侵害された真正相続人は、相続回復請求の訴えを提起して、相続財産を返してもらうことができます。 相続回復請求は、相続権が侵害されたという事実を知った日から3年以内、相続権の侵害が発生した日から10年以内に提起する必要があります。

在外国民(在日韓国人)の相続準拠法及び法定相続分とその他日本との違い
- 原則として、本国である韓国の民法が適用されます。
1) 日本国際私法【法の適用に関する通則法】第36条に従って、被相続人の本国法が適用されるため、相続における準拠法は韓国民法となります。
2) 被相続人が韓国国籍であれば韓国民法が適用されます。この場合、相続人全員が日本国籍であっても同じです。 日本国際司法と同様、韓国国際私法第49条でも[被相続人の本国法に基づく]と定まっており、 被相続人の国籍により準拠法が違ってくることが分かります。
3) 遺言状で [日本にある財産については、日本民法を適用する]という文言がある場合は、日本民法が適用して相続手続を進めることができます。 しかし、そのような必要があるかどうかについては検討する必要があります。
4) 日本国籍の被相続人が、日本で作成した遺言公正証書をもって、韓国不動産に対する相続登記が可能かという問題があります。 登記先例では、 遺言者が遺言時に国籍を持っている国家の法律が定める方法で遺言をすることができるので (『国際私法第50条第3項』)、遺言者が国籍を持っている国の民法に従って作成した遺言公正証書を韓国で相続登記をするとき相続の原因を証明する情報として提供することができます。 そのとき、公正証書(アポスティーユを含む)の翻訳文も提出しなければなりません。

相続人の範囲
韓国 | 日本 | |
---|---|---|
1順位 | 配偶者と被相続人の直系卑属 | 配偶者と被相続人の直系卑属 |
2順位 | 配偶者と被相続人の直系尊属 直系卑属及び直系尊属がいない場合配偶者が単独の相続人となる | 配偶者と被相続人の直系尊属 配偶者の単独相続権無し |
3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 | 配偶者と被相続人の兄弟姉妹 |
4順位 | 被相続人の4親等以内の傍系血族 |

40年ぶりの改正による相続法のポイント (日本編)
約40年ぶりの民法改正により相続法の一部が大きく変わりました。
今回の改正は、自筆遺言証書や預金支給などの相続手続に大きな影響を与える重要部分が改正されたのが特徴です。
既に2019年、2020年4月から施行されてある内容の中から相続に関連して改正された主な内容を紹介します。

相続に影響を与える五つの変更
ア.自筆遺言証書を法務局で保管することができるようになった (2020年7月10日から施行)
公証事務所で保管する公正証書遺言とは違って、自筆遺言証書は変造または滅失する恐れが多かったのだが、今回の改正により、これらの自筆遺言証書を法務局で保管することができるようになりました。 ただし、このサービスを利用するためには、被相続人が直接法務局へ訪問する必要があります。
イ.配偶者住居権の新設 (2020年4月1日から施行)
従来から配偶者が暮らしていた住宅で済み続けることができる権利を守るため、住宅について[配偶者の居住権]及び[負担付所有権]を権利として二種類にわけました。 これにより配偶者は、住宅を相続しながら、その他の預金などの財産についても、相続できるようになりました。
ウ.自筆遺言証書に添付する財産目録をパソコンでの作成ができるようになった。 (2019年1月13日から施行)
財産を多く所有している場合、 遺言状に添付する財産目録が何枚も増えることがあります。 このとき、自ら手書きで財産目録を書き続けるという負担を軽減するため、パソコンで作成した文書や預金通帳のコピーなどで財産目録に代えることができるようになりました。 その場合、必ずすべてのページに署名捺印をしなければなりません。
エ.預金などの引き出しができる制度を新設 (2019年7月1日から施行)
今まで亡くなられた方の預金通帳は、死亡と同時に凍結され、家族や相続人などがこの預金を引き出すことができませんでした。 今回の改正で、葬式費用など一定の金額までは引き出しができるようになりました。
オ.遺留分減殺請求権を行使して、金銭請求ができるようになりました。 (2019年7月1日から施行)
従来の民法では、遺留分減殺請求をすると、不動産が他の相続人と共有されるなど、実際の権利関係において不都合が生じる場合が少なくありませんでした。 今回の改正で、遺留分減殺請求権を新たに[遺留分侵害額請求権]とし、これももとに金銭債権を発生させ、不動産共有状態の問題を金銭で解決できるようになりました。

相続放棄また限定承認
相続が発生して、相続放棄や限定承認の手続きを進めようとするが、相続人の国籍が日本国籍であるため、韓国で相続手続きに関する書類準備が困難な場合があります。

相続放棄 - 相続放棄は、相続人が相続開始を知った日(被相続人が死亡した日)から3か月以内に ‘亡くなった方の財産及び負債などの全ての権利を放棄’ する制度です。
ア. 相続放棄のメリット
相続放棄をすることで、亡くなった方の財産や負債など全ての権利及び義務を放棄することで相続人でなくなることになります。 従って、限定承認と比較して簡単な手続きであり、後になって負債などについて神経をとがめることも少なくなります。
イ. 相続放棄のデメリット
先順位相続人が相続放棄をすると、被相続人の財産や負債が後順位相続人に属することになります。
例えば、第1順位相続人である子どもや配偶者が相続放棄した場合、被相続人の財産や負債は第2順位相続人である(亡くなった方の)両親に移られます。 このように相続放棄をすると相続順位に応じて、被相続人の財産や負債が他の家族に属するため、相続人の誰かが借金を背負わなければならない状態が続きます。

限定承認 - 限定承認とは、相続人が相続の開始を知ってから3か月以内に、‘被相続人の財産の範囲で、借金などを返済する’ 制度です。
ア. 限定承認のメリット
限定承認は、相続放棄とは違って、先順位相続人の中で1人が ‘限定承認’をすれば、後順位相続人に被相続人の財産と負債が承継されません。従って、被相続人の負債を後順位相続人が背負わせれないように限定承認をします。
イ. 限定承認のデメリット
限定承認は、相続放棄に比べて裁判所に提出する書類が多くなります。そして、限定承認の後に被相続人の財産が残っていたら、債権者に分配が必要となる場合があります。
